2013年7月29日月曜日

【書評038】「下流喰い 消費者金融の実態」須田慎一郎

「下流喰い 消費者金融の実態」須田慎一郎
URL:http://goo.gl/QoGvTF


概要:

2006年ピークを迎えていたサラ金業界のレポート
背景から、問題点まで具体的に記載


感想:

毎週、サラ金業界の本を読んでると気が重くなってくるのだが、本書も急拡大した消費者金融業界のビジネスモデルとその問題点を指摘する。より具体的な記載もあり分かりやすい。個人の少し足りない資金を無担保で貸し出すサラ金と言うビジネスモデルは、需要を確実に押さえ、拡大していった。その拡大を進める中で、貸し付けることだけに注力してしまい、本来の理想とはかけ離れた営業を行ったため、規制により縮小後、銀行に吸収された歴史がある。

1:高金利
2:過剰融資
3:過酷な取立

特に、アイフルはその急先鋒であり、全国の消費者センターに寄せられた苦情・相談件数は2005年に3000件を超えた。当時のアイフルはチワワを使ったCMを放映していたが、内情は真逆。その年、2005年5月には金融庁の立ち入り調査、2006年4月には国内1900店全店の業務停止を命じる行政処分を下された。

その後、司法(最高裁判所)からも2005年7月に「貸金業者は取引履歴を開示する義務を負い、開示しない場合は不法行為とみなしてい車両の支払い義務が発生する」と判断を行った。いわゆる過払い金請求の第一歩である。

----------------------------------------------------------
ここで消費者金融大手が、一連の過払い金返還訴訟にどれほどの巨費を投じてきたかを再度、確認しておこう。2006年3月期決算では返還にまつわる経費としてアコム372億円、プロミス384億円、武富士411億円が計上され、大手4社で年間約1500億円の費用負担を強いられている。(P48)
----------------------------------------------------------

どのくらい行政が消費者金融大手を危険視していたのかは一般紙のインタビューでも語られているぐらいだった。

----------------------------------------------------------
朝日新聞紙面に後藤田正純・内閣府政務官のインタビュー記事が掲載された。後藤田氏は、金融庁の有識者懇談会のリード役をつとめたキーマンの一人である。「貸金業はもともと庶民の金融だ。(庶民金融だというのならば)切羽詰まった需要に対面で小額を融資し、元利均等で返済してもらうのが基本。年収を上回るような今の貸し方はおかしい。消費者保護には違法収益の返還が必要だ。やらなければならない。(P63)
----------------------------------------------------------

「消費者金融はもうけすぎた」これは筆者が本書に度々記している言葉となる。そのもうけすぎた方法はグレーな法律の配下で違法な貸付と取立を行っていたことにある。その為、行政と司法から相次いで処罰を受けたのが事実である。それではどのくらい儲けたのかは、広告費からもわかる。

----------------------------------------------------------
大手5社の年間宣伝広告料はすでにトータルで800億円規模(2005年)に達しており、消費者金融のテレビ・コマーシャルがゴールデンタイムは言うに及ばず、ほぼ一日中、垂れ流しにされているのは周知の通りである。(P206)
----------------------------------------------------------

グリーが2012年広告費70億って言われてるので、DeNA、その他と合わせても200億弱ぐらい。昨年末にCAが30億出稿して話題になりましたが、2005年なんてテレビのCM料金も今よりずっと高いことを考えれば比較にならないぐらい高い。5社で800億。本業が儲かってたことがうかがえます。本当に儲かってたんだなと。

この消費者金融業界、2005年~2006年ぐらいをレポートした本や小説が多く、貸金業法改正後に関して記した書籍が非常に少ないです。業界としては、過払い金請求により資金流出、それを救ったのが銀行。その後、業界としては浮上することなくほぼ横ばいで推移していると言う感じです。そして対面貸付からネットへシフト。現在我々のクライアントでもあるという流れになります。



【送料無料】下流喰い [ 須田慎一郎 ]
【送料無料】下流喰い [ 須田慎一郎 ]
価格:735円(税込、送料込)

2013年7月22日月曜日

【書評037】「クレジットカードの知識」水上宏明

「クレジットカードの知識」水上宏明
URL:http://goo.gl/xl4gbf


概要:

クレジットカードのビジネスモデル、問題点を記載
貸金業法改正後に改訂された


感想:

クレカ、誰もが1枚は持ってると思います。「年会費無料」「ポイント競争激化」「edy、suicaなど電子マネー普及による決済の小額化」などサービス過多となり、一見収益が減少しているように見える。しかし、取扱高は拡がっており、その収益源はキャッシングとなる。よって、先週と同様、貸金業法改正に関しては大きな影響を受けた業界である。

40.004%→29.2%→20%以下と引き下げられてきた貸付利率による収益低下、2006年1月に「有効な利息の債務の弁済とみなさない」と判決がでた過払い金請求問題などにより、消費者金融単体会社は成り行きが行かなくなりました。ただし、ATMからの引き出しを可能とし、その手数料は貸金業法には影響しなかった。

銀行側から考えると、バブル経済崩壊後の不良債権問題、リーマンショックなどで倒産と合併を繰り返しなんとか生き延びたのが現状です。その銀行側からみて一番攻めやすい分野が個人リテールといわれるキャッシング分野。そのキャッシング分野を攻めるにあたっての一番適したアプローチがクレジットカード分野強化となる。まとめると、


<消費者金融>
・貸金業法改正
・過払い金請求問題
・収益悪化、単体では成行かず

<銀行>
・バブル崩壊後の不良債権問題
・リーマンショック
・新たな収益をキャッシングに定め、クレカ強化

<クレカ>
・収益低下(会費無料、ポイント強化、手数料引下げ)
・主な収益はキャッシング
・銀行との連携強化(ATMでの利用開始など)


となる。
--------------------------------------------------------------------------

今回の規制は、消費者金融のマーケットから貸金業者を締め出して、銀行に渡す為のものである、と指摘する意見があります。銀行がどの程度このマーケットからの収益を期待しているかはわかりませんが、ATM手数料の扱いを見ると、当局の意図がそんなところにあるというのも、あながち間違っていないように思います。
(P70)

--------------------------------------------------------------------------

貸金業法が制定された翌年、同法を所管することになった大蔵省が設置した金融問題研究会は「我が国における消費者信用のあり方」について研究し、「銀行が、消費者に対して良質な資金を安定的に供給していくこと」を低減しました。
(P128)

--------------------------------------------------------------------------


本書は、基本的なクレジットカードのビジネスモデルを解説しながら、問題点を明記する。それは収益がキャッシングに偏りすぎていること。この本を読むとすでにクレジットカード業界と言うものは無く、クレカ→キャッシングと言う転換が一番容易なため、クレカ市場が伸びていると言うことも分かりました。

キャッシングを狙う、銀行。その銀行はギャンブルっぽいベンチャー投資を抑制しつつある。そこに目をつけたベンチャーキャピタル各社。あまり出来上がっていなビジネスモデルにも積極的に投資している。これはいいことなのか、悪いことなのか。投資はギャンブルだけど、銀行からみると「キャッシング>ベンチャー投資」なのが分かります。



2013年7月16日火曜日

【書評036】「理解されないビジネスモデル 消費者金融」藤沢久美

「理解されないビジネスモデル 消費者金融」藤沢久美
URL:http://goo.gl/ioxsq


概要:

消費者金融の成り立ちから、そのビジネスモデルまで。
消費者金融業側からの意見。2008年の本。
簡単に書くと、理念は素晴らしいが儲かりすぎて、競合多数、苛烈競争で国から規制。中小は潰れ、大手のみ銀行傘下で生き残る。


感想:

個人金融と言えば、「質屋」が代表的だった時代、物々交換ではなく、サラリーマンであれば、無担保・即時で貸し出しを行ったのが、消費者金融の始まり。「勤め人信用貸し」→「サラリーマン・クレジット・ローン」→「サラリーローン」→「消費者ローン」と呼び方が変わっていった。

銀行は、法人中心であり、預金はもらうが貸し出しは行わなかった。唯一個人に貸し出したのは「住宅ローン」のみ。そんな中、サラリーマンの25%が消費者金融を利用している。約1/4。この大きさに驚いた。この本に出てくる、アコム会長の木下や、レイク社長の谷口(どちらも2008年当時)もその小口金融に使命を感じて業務に対応しているのが書いてある

この考え方が正しく、業績は急拡大。上場する会社も出てきて、過剰な競争に各社が至ることに。結果、多重債務者の激増、商工ローン問題発生、暴力的な取り立てなどのバッシングを受け、2006年12月に貸金業法成立に至る。貸金業法に関しては反発もありますが、ユニワード社長は下記の通り記載。


ユニワード株式会社 代表取締役 饗庭(過払い金請求で2010年倒産)
--------------------------------------------------
私たちが、派手なテレビCMや屋外看板と言う形でしか社会から認識され得なかったのは、ある意味で、「分相応」の行動ができなかったからでしょう。消費者金融業は社会に不可欠なものではありますが、目立つべき総菜ではありません。自らの分をわきまえていたら、過払い金返還請求もここまでエスカレートしなかったのではないかという気がします。
--------------------------------------------------

この本は2008年に出版されたので、いわゆるグレーゾーン金利問題、総量規制、過払い金請求など真っ只中。2013年からみると、資金力の無い中小は潰れ、大手も銀行系に入り、なんとか過払い金請求から生き延びた。ただし、個人金融の需要は無くならず、その受け皿が大手消費者金融ではなく、銀行系のカードローンが担っている。昔は、武富士のCM(踊ってるやつ)が深夜に流れ続け、小野真弓が「はじめてのアコム♪」を連呼し、アイフルが犬を出す。

いまは、阿部寛が三菱東京UFJカードローンを宣伝しまくってる。プロミスが相武紗季で対抗って感じでしょうか。アコムのタモリは確かに驚いた記憶がある。業界としてはあまり変わってない印象。ただ、個人に対しての「無担保」「即時」貸し出しに対するリスク管理は銀行に無いノウハウ。ここの強みが無くならない限り、引き続き需要が多い業界だと知りました。勉強になった。

このバッシングされまくっている業界側視点の本はあまり無かったので、社員の人はこういう気持ちで働いてるんだろうなと思いました。パチンコ業界の人間が「総合エンターテイメントを提供してます(`・ω・´)」となんの躊躇もなく言っているように。