2013年6月24日月曜日

【書評033】「レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる」佐々木俊尚

「レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる」佐々木俊尚
URL:http://goo.gl/GqmVD

 概要:

「キュレーション」と言う単語を世に広めた著者の最新作。
今回は、「レイヤー化」


 感想:

意外に賛否両論。個人的には最後の「未来編」だけ読めば良かったかも。
著者も「中世」「近代」は高校生向けに書いていると解説。

まずはレイヤー化とは何を意味するのか。
少し長いですが引用します。
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たとえば音楽やテレビ、本といった娯楽は、次のようなレイヤーにスライスされていきます。

・インターネットというインフラのレイヤー。
・楽曲や番組、本などが販売されるストアのレイヤー。
・どんな音楽や番組が面白いのかという情報が流れる、メディアのレイヤー。
購入した楽曲や番組を、テレビや音楽プレーヤーやスマートフォンやパソコンで楽しむという機器のレイヤー。
・そして楽曲や番組そのものというコンテンツのレイヤー。

どのレコード会社のつくった楽曲なのか、どの放送局のつくった番組なのかという縦の切り分けは、この<場>の世界では意味を持ちません。どんな楽曲だろうが、どんな番組だろうが、全部ガラガラポンとこの中に運び込まれて、それがさまざまなレイヤーを経由して、みなさんの手元に運ばれる。そういう風に変わるのです。(P206)
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ここまでは分かる。レコード会社の帝国化が弱まったのも実感として分かる。ただ、本書かここから非常に難解になっていきました。各レイヤーを「場」と位置づけ、その場には「ウチ」と「ソト」があると定義付け、民族、国境、言語、政治、金融、産業、雇用、文化、それぞれのレイヤーに影響してくると書く。

この辺で何が言いたいかよく分からなくなりました。簡単に考えれば、それぞれどんな機会でも発信することができる。よって、どの階層にいてもある程度平等な世界である、ってことでしょうか。

一つだけしっくりきたのが、現代は中世に回帰していると書いてあるところ。中世は「家内制工業」でした。必要な数を作るのでは無く、作れる数を作り、それを売る。そして近代に入り、大量生産時代「工場制手工業」に移行。以後は産業革命を経て大量生産時代が続いています。

ところが、現代は、3Dプリンター、クラウドファインディングにより、必要な数を必要な時に必要なだけ生産する時代になりつつあります。車も、もしかしたら一人ずつ違うデザイン、性能の時代になるかもしれない。そういう生産は「家内制工業」である、と書いてあったところです。このくだりはなるほどと思いました。

このネットによる情報とお金の流れの変化と3Dプリンターによる生産の変化は世の中を変えるんだと改めて実感できました。タイトルのレイヤー化は複雑すぎました。




2013年6月17日月曜日

【書評032】「不格好経営 チームDeNAの挑戦」南場智子

「不格好経営 チームDeNAの挑戦」南場智子
URL:http://goo.gl/eiDW1

 概要:

DeNA南場さんの創業記


 感想:

面白かったです。CA藤田さんの「起業家」より何倍も面白かった。
そして、この本を読むと、南場さんはビッターズ、モバオクへの思い入れがモバゲーよりもとても強いということが伝わってきた。

僕もこのビッターズ時代を読んでてとても楽しかったです。南場さんが素直に書いてるネット立ち上げ時のドタバタ感、すごく分かる。この時代は確かにネットの可能性が無限だと感じ、そこに商機があると信じ、多くの若手が寝ないで働いてた時代でした。個人的にもその現場に携わってたことは運が良かったと思ってます

南場さんにとって、モバゲーは自分で大きくした感覚無いんだなとも感じ取れました。すごく反対してたって聞くし。出会い系って言われることに、感情的に対応してたし。怪盗ロワイヤルの成功で一線を退くことを模索しはじめたのだなと思いました。

意思決定についての表記が印象に残ったので転記します。
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「社長の一番大事な仕事は意思決定」

この意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないということが極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。

継続討議はとても甘くて、らくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に一週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。そして、待ち構えていた現場がまた動けなくなり、ほかのさまざまな作業に影響を及ぼしてしまう。
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1990年後半から2000年前半にかけてネットで大きくなった会社の経営者が続々本を書き始めてとても興味深いです。ホリエモン(Livedoor)、藤田(CA)、南場(DeNA)、残りは三木谷(楽天)、村上(yahoo)でしょうか。それと田中(gree)も書いたら読んでみたい。なにを書いて、なにを書かないのか。



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2013年6月10日月曜日

【書評031】「成功者3000人の言葉」上阪徹

「成功者3000人の言葉」上阪徹
URL:http://goo.gl/csIvZ

 概要:

著者上阪徹がインタビューで聞いた言葉を紹介


 感想:

自己啓発系は普段読まないのですが、本書はレビュー評価が非常に高かったので、読んでみました。結論、どこかで聞いたことあるような言葉も多いのですが、それでも再度の気付きになる項目が多かったです。あえて難点を書くならば、誰が言った言葉なのかが書いてないこと。「誰が」「どういう背景」で話したのかも大事な要素のはずなので、そこは書いて欲しかった。

印象的だった言葉を記します。


「勝負は日常が決める」
もし自分を変えたい、自分を変えようと考えるなら、日常から変える必要があります。日常にこそ、全ては宿っている。日常と違う自分を出そうとしても、知らず知らずのうちに、日常の自分が出てきてしまうのです。


「キャリアプランはいらない」
キャリアプランだ、人生設計だ、なんて、やるべきではない。そんな傲慢な話しはない。人生は自分でコントロールできるほど簡単なものではない。思ってもみないことが起きるのが、人生の醍醐味。それを、とことん楽しんだらいい。


「うまくいったときこそ、変化を求める」
人は、何かがうまく行きだすと変わることを恐れるようになります。変わることを恐れるべきではないのは、世の中が変わっていくからです。まわりが変化していくのに、自分が変化していかなかったらどうなるか。古い価値観のまま置いてきぼりになっていくりすくを背負い込むことになります。


他にも良いのありました。オススメです。





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2013年6月3日月曜日

【書評030】「Tweet&Shout ニュー・インディペンデントの時代が始まる」津田大介

「Tweet&Shout ニュー・インディペンデントの時代が始まる」津田大介

URL:http://goo.gl/F6Ej9

 概要:

kindleストアのセールで300円だったので買いました。


 感想:

コンテンツ産業における、新しい収益確保方法を問題点を明記しつつ今後のコンテンツ業界とネットはどうあるべきかを記載している。CDが売れないと言われて久しい音楽業界は2000年代に入って、ライブと物販を中心とした収益源を求めて大型フェスやツアーを組むようになった。いわゆるダイレクトマーケティング強化を推進した。


では肝心の楽曲ネット配信はどうだったかと言うと、itunesと敵対し各レコード会社が独自の楽曲ダウンロードサービスを開始。最近やっとSONYがitunesに楽曲提供したとしてニュースになってました。


なぜネットのコンテンツビジネスが上手くいかなかったのかと言うと、逆説的な書き方となるが、ネットのコンテンツビジネスが上手くいきすぎていたからと言える。着メロの市場は2005年に1000億となった。出始めの着うたを併せると1500億円。成功のカギはimodeと携帯課金。恐らく最初にデジタルコンテンツ配信を成功させた国が日本。


だからappleの戦略に各社が乗れなかった。そのため世界的に遅れてしまったのが日本である。津田はツールがそろった今こそ新しいコンテンツビジネスが成功すると書く。youtube、ustrean、twitter、そして日本特有のニコ動。これらを使った新しいビジネスモデルが一番わかりやすいと説く。


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楽曲を直接売るだけじゃなく、いろいろなサービスと引き替えに、毎月500円とか1000円の回避を払ってくれるファンを500人、あるいは1000人集めるとか。そういうのが、たぶんひとつの目標だと思うんですよね。
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書評見ると「薄っぺらい」って書かれたりしてますが、津田大介って分かりやすく書くなと思う。高校生くらいが読むといいのではないでしょうか。書いてあることはそれほど新しい事も無く、淡々と歴史を振り返り、持論を伝える本でした。




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