2013年8月26日月曜日

【書評042】「MEDIA MAKERS―社会が動く【影響力】の正体」田端信太郎

「MEDIA MAKERS―社会が動く【影響力】の正体」田端信太郎
URL:http://goo.gl/9FcAGU


概要:

R25、BLOGOS、LINEなどのサービスに携わりメディアを作ってきた著者の経験から記されたメディア論


感想:

先週の、「5年後、メディアは稼げるか」著者、佐々木紀彦が「現代のメディアを語れる人が少ない」と書いていた。本書の著者、田端信太郎はいま現在メディアを語る代表的な一人だと思う。その人の初めての本。


本書もメディアの変化を実例を挙げて説明します。「フロー」←→「ストック」、「参加性」←→「権威性」、「リニア」←→「ノンリニア」と。そしてこの3次元の軸に基づいて、しっかりとした方向感覚を持ち、デバイス環境や時間の使い方を踏まえ正しく把握すること。これをメディアに携わる人の必須スキルだと述べています。


そして、メディア作りで一番大事なのが「ペルソナ」の設定だと断定。ペルソナとは架空の顧客と定義付けられています。


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長編小説を書く作家や人気漫画の原作者が、作品完成後のインタビューなどで、しばしば『頭の中に、登場人物たちの「キャラ設定」さえできてしまえば、あとは勝手に登場人物たちが、ストーリーを前に引っ張っていくんですよ』といった主旨のことを話すのを聞いたことはないでしょうか。ここで言われる「キャラ設定」と、メディア編集の世界における読者「ペルソナ」の設定は、ほとんど同じものだと思います。

宮崎駿がナウシカやキキ(魔女の宅急便)を思い浮かべ、「こち亀」作者である秋本治が両津勘吉を思い浮かべるような距離感で、自分たちが関わるメディアの対象読者のことを思い浮かべるようになれれば、メディア作りは半分成功したも同然でしょう。(位置NO.1052/2143)
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もう一つ、今後のメディアにおける「3つの巨大トレンド」を記しています。


1.モバイルインターネットの波
2.コンテンツ編成・編集の民主化
3.プラットフォーマーによるメディア空間の支配


特に、3は、「グローバルでプラットフォーマーとして生き残るのはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの【ギャング・オブ・フォー】に集約されるだろう」と説明します。アップルの急落を考えると、ギャング・オブ・スリーと考えることが出来るかもしれないです。


そして、このトレンド変化後のメディア予測は難しいと記載し本書を終了しています。先週もそうでしたが、いまのウェブメディアは業界を語れる人も少なく、実績を残している成功者達も予測出来ないと宣言してしまう業界となっています。何を伝え、どう収益化させていくのか。これは黎明期のIT業界のようでとても面白いなと改めて思いました。


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価格:1,680円(税込、送料込)

2013年8月19日月曜日

【書評041】「5年後、メディアは稼げるか」佐々木紀彦

「5年後、メディアは稼げるか」佐々木紀彦
URL:http://goo.gl/I9ijHo


概要:

いま、ウェブメディアで一番勢いがあると言われている「東洋経済オンライン」編集長が書いたメディア論。


感想:

TVや新聞、雑誌などのマスメディアから、ソーシャル、ブログなど個人発信メディアに移行が進んでいるいま、メディアは面白いなと個人的に強く思ってます。既存の読ませるメディアからどういうメディアなら人が集まるのか、価値を高くできるのか、それをいち早く見出したサービスがいつ出てくるのか。


筆者はまずはメディアの変化を説明します。「紙→デジタル」「文系→理系」「コンテンツ→データ」「会社→個人」「平等→競争」「ジャーナリストのみが書き手→全ての人が書き手」


しかし、こういうデジタル化の流れをもってしても、ウェブメディアの収益化は難しいと記載します。マスメディアのように高単価で広告が販売出来ず、バナー広告のクリック率も徐々に減少、アドテクの進化により広告主側にはとても良い仕組み(アドネットワーク、DSPなど)が確立されているが、媒体側はさらに安く買い叩かれると。


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ひるがえって、割を食うのは媒体側です。入札で価格を落とされる上、寺社の広告枠はほかと組み合わせるだけの単なる部品となってしまいます。千切りにされて散り散りに売られていくのです。在庫はさばけるかもしれませんが、ブランド価値もクソもなくなり、とめどない価格低下プレッシャーに襲われます。(P127)
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このように「十把一絡げ」状態から抜け出す方法の一つとして、「広告を面白くする」という宣言を行っています。正確には、「ブランドコンテンツ」という手法。


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ブランドコンテンツの古典的な例が、ミシュランの料理ガイドです。ミシュランの本業はタイヤであり、料理とは何の関係もありません。しかし、この料理ガイドがヒットしたことで、ミシュランの名前が世界に知れ渡り、タイヤのブランディング、販売にも大きく寄与しました。(P133)
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ネイバーまとめの公式(http://goo.gl/7037d)も結構同じイメージかなと思いました。無くなってたけど、少し前にあったマクドナルドのまとめは面白かったし。
逆に言うと、いま一番成功しているウェブメディアの編集長もこれだけしかメディア将来の解をもっていないんだなと思った。ウェブメディア業界はいまが黎明期。だからこそ参入チャンスはあると感じた。


メディア構築には時間も金もかかるのは承知の上。まずは収益化ってことで「比較サイト」を始めますが、そのメディアを軸に試行錯誤しながらメディアに携わっていきたいと考えてるし、いろいろと経験して行きたいと改めて思いました。





2013年8月14日水曜日

【書評040】「仕事をつくる 私の履歴書」安藤忠雄

「仕事をつくる 私の履歴書」安藤忠雄
URL:http://goo.gl/J2kcg9


概要:

学歴も、建築士の資格もなかった著者が独学で学び、建築に携わったことを書いた本。日経新聞「私の履歴書」に加筆したもの。


感想:

安藤忠雄、好きな人も多いと思います。表参道ヒルズの建築家と言えば分かりやすいかも。この人、大学出て無いので、独学で建築士の資格を取り、少しずつ信頼と実績を積み重ね、東大の教授も経験しています。

本書からは、著者の覚悟が読み取れます。「○○になりたい」では無く、「○○になるためにはどうするのか」を常に考え行動し続ける。誰でも出来そうなんだけど、ここまで徹底した行動をとるからこそ結果を残せていると思いました。

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が、何をどう勉強すれば良いのか分からない。大学の建築学科に進んだ友人に頼み、授業で使う専門書を何冊も買った。その教科書を読もう。読んで読んで、読みまくろう。友人たちが4年かけて理解するのを1年で読破しよう。読むだけでは理解出来ないことも分かりながら、朝起きてから寝るまでひたすら本に向かった。それが最良の方法だったのか、今でも分からない。それでも意地と気力で1年間やり遂げた。(P37)


高校で建築を専攻していなければ、まず二級を受けるのに実務経験が7年以上必要だという。その時には絶対に一発で合格しようと覚悟を決めた。しかし、昼間の仕事から帰ると体はもうくたくたである。勉強をしようとしても眠気に襲われる。

そこで昼飯の時間を節約することにした。朝、仕事場に行く前にパンを2つ買っておき、それをかじりながら建築の専門書を読むのである。日曜日には、電車で奈良や京都に出かけて寺社を訪れ、そこで本を広げた。当時に旧建築士の試験は主に木造建築だったから、一挙両得であった。(P57)

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この辺の苦労があったからこそ、全てデザインする建築に対して、関係者(地権者や依頼者)、環境、予算と徹底的に会話する。決して自分の一存で決めつけない。対話の中からデザインを決定して行くと言うプロセスが確立されたのではないかと感じました。こういう進め方参考にしたいです。




2013年8月5日月曜日

【書評039】「ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録」西川善文

「ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録」西川善文
URL:http://goo.gl/YCWS6a


概要:

三井住友銀行元頭取、日本郵政公社2代目などをつとめた西川善文本人が書いた本。金融業のトップ本人が書いた本は少ないので、読んでみました。


感想:

消費者金融のことを調べれば調べる程、銀行がこのキャッシング業界の利幅を取りにきていることが顕著に分かります。そこで銀行側のトップが記している本を読むことで、銀行側の視点を持ちたいと思いました。結論本書にはキャッシングに関しての言及はありませんでした。。

かつて銀行というのは、日本でも有数の安定した企業であり、そのトップを「筆頭取締役」略して「頭取」と呼んでいた。他に「雅楽の首席奏者」のお公家様と言う意味もあったらしい。しかし筆者はそんな牧歌的な時代を過ごせず、常に変化する金融界でもがき苦しんできた実態を記す。

住専問題、銀行合併、郵政民営化など90年~00年代に起こった事象の責任者であった筆者は住専では中坊公平と銀行合併時代では、東京三菱やUFJと、郵政では当時人気だった民主党の鳩山邦夫と。この辺のやり取りが詳細に記されている。

これらの問題に対応する時、一番必要なのがスピードと筆者は記す。「スピードこそ付加価値である」と。1997年6月、住友銀行の頭取就任時挨拶でも表している。

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「我々の最大の競争相手は、他行でも外国金融機関でもない。それは、時代の変化だ。そして、その中で変化し続ける顧客のニーズやウォンツとの競争だと思う。真正面から取り組み、それを先取りする形で対応しなければならない。自らの革新がつねに求められている。過去の成功体験にこだわっていては対応できない。新風への期待にまだどこも応えていない。私はみなさんとガッチリとスクラムを組んで、真っ先にこの期待に応えて行きたい」(P189)
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(ほぼ)無風だった銀行という業態でここまで変化への対応を求めるのは、バブル崩壊、金融ビックバン、リーマンショックなど、ここ20年は銀行界にとって非常に変化の大きい期間だったんだと実感できました。

変化を求める速度と、その業界にいる人の体感する速度はそれぞれ。銀行だと筆者が書いたスピードが最速なんだと思う。いまのネット業界は最速で変化する有数の業界なので、その変化に常に対応するように意識して行動し続けないといけないなと改めて思いました。



【送料無料】ザ・ラストバンカー [ 西川善文 ]
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