2013年9月24日火曜日

【書評046】「メディアの仕組み」池上彰×津田大介

「メディアの仕組み」池上彰×津田大介
URL:http://goo.gl/uWKkW


概要:

池上彰と津田大介のメディアに関する対談集


感想:

この本、Amazonとか楽天で購入できないし、本屋で販売しているところも少なくてなんでだろうと思ってたら、夜間飛行から出版された本でした。新しい試みとして、本を買った人には電子データも提供。本が手元に無くなっても電子データは残る仕組みになってます。アメリカのアマゾンが開始しようとしているサービスですね。

本書は、テレビ、新聞、ネットに関してそれぞれの考え方を述べた後で、情報の取り扱い方、収集の仕方などを対談形式で話している本です。池上彰と津田大介で情報収集方法がまったく違いました。また情報が溢れる現代においての情報の対し方を下記の通り記していました。


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池上 そうです。「これが正しい情報だ」なんて最初からすぐに分かる人なんていないんです。「正しい情報」と「間違った情報」を瞬時に切り分ける能力ではなくて、「実は分かっていないんじゃないか」という恐れを持つこと。それが、メディア・リテラシーなんだと思います。
(P142)
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正しい情報だけを集め続けるのには限界があり、それよりも自分が分かっていること、分かっていないことを冷静に判断することの重要性を繰り返し記載していました。また、インプットモチベーションについては、


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池上 そうですね。本気で「伝えよう」とするアウトプットは、やはりインプットのモチベーションになるわけです。何か伝えたいことがある方は、ぜひ相手にそれを伝えてみると良いと思います。実際に伝えてみようとすると、きっとうまくいかない。そこで、「どうして上手くいかないんだろう?」と考える。必要だと思えば、さらに周辺情報を調べていく。たぶんこれが重要なんだと思います。
(P168)
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これ、例えば2年目になったばかりの社員が新卒に何か教えるとき初めて自分がよく分かっていないことに気付くなどが良い例ではないでしょうか。教える側、伝える側になって初めて自分の理解度が分かる。

全体的には初心者向けの記載が多く、読みやすい本でした。





2013年9月18日水曜日

【書評045】「データサイエンティスト(data scientist)」橋本大也

「データサイエンティスト(data scientist)」橋本大也
URL:http://goo.gl/kXLQMr


概要:

ビッグデータを解析、分析する人という意味で使われ始めた「データサイエンティスト」著者が現在考えるデータサイエンティストの解説と求められる資質


感想:

ビックデータ関連の本と合わせて読むと、とても面白いし、今後のビジネスの進め方やマーケティング手法が変わることを実感する本でした。

データサイエンティストとは何ぞや?例えば、2012年、Microsoftがテクノロジー業界で最もホットな専門職を以下の3つを提示したことがある。


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1:データマイニング、機会学習、人工知能、自然言語処理
2:ビジネスインテリジェンス(BI)、競合情報分析
3:分析、統計。特にウェブ解析、A/Bテストや統計分析
(P22)
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全て、大量の情報を分析する仕事に関わる職種ばかりとなる。そして、データサイエンティストとはこの3つを統合した先にあるのではないかと著者は記します。そして、著者は自身の考える、データサイエンティストに必要な3つの能力を続けて記します。


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1:統計とITの能力
2:ビジネスの問題を発見し解決する能力
3:創造的な提案を行う能力
(P32)
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著者は、単なる分析屋で終わるならば、データサイエンティストと言う職種は一時的な盛り上がりはあっても、定着しない職種であると記載します。あくまでも「分析」「発見」「解決」「提案」を行っての定着だと協調を行い、既存の研究者や分析部門とは一線を画することを提案します。

また、現在ビックデータと言われる新しめのwebから取得出来るデータを一番活用出来ている会社としてyahooを紹介。yahooには「データソリューション本部」と言う部署があり、そこにはデータスペシャリストと言う名で200人近くがデータの分析と提案を行っている。例えば、検索窓の高さを22ピクセルから28ピクセルに拡大させて、売上を4.8億増大させたなどは読んでいて面白いなと思いました。

著者は一貫して、データサイエンティストはサイエンティストではなくビジネスパーソンだと書きます。しかし、サイエンティストと言う単語を使っている限りにおいては「分析屋」の範疇から出られないことも想定し、もう一つの単語「グロースハッカー(growth
hacker)」を紹介。日本訳だと「成長請負人」、卓越した技術力に酔ってウェブサービスの成長を実現する職種を指す。

元ペイパルのデーブ・マクルアはグロースハッカーの用いるべきデータ分析モデルとしてAARRRモデルを提唱している。


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1:Acquisition(獲得)
2:Activation(定着)
3:Retention(継続)
4:Referral(紹介)
5:Revenue(収益)
(P200)
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AIDMAと似てる感じがするけど、大きく違うのは、Attentionは計測出来ないが、Acquisitionは計測ができると言うこと。これだけでも分析やその後の提案に大きな差が生じる。よってAARRRモデルがいいですよ、と。

最後にソフトバンクモバイルのデータ活用に関するインタビューがあるのだが、これを最後に持ってくる理由も明確に感じました。


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---ソフトバンクの中に「データサイエンティスト」という肩書きの人はいるのでしょうか

いません。全社を通じていないと思います。分析の役割を担う人間と言う意味では、各部署に散らばっていて、事業会社として何らかの形で数値を扱う部門であれば、各部、各課といった単位で分析を行っているというのが現状です。


---データ分析を行う人は理系がメインなのでしょうか

私は文系です。あまりそういった区分はしないですね。理系であれ文系であれ、数字に強くないとやっていけない会社ですので、何かやりたいことがあったとき、それを裏付ける数字を示せないと提案が通りません。
(P223)
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データサイエンティストは、サイエンティストでは無く、ビジネスパーソン。特別な職種では無いと何度も記します。だから、文系、理系関係無く誰もが身につけるべきスキルだとも。ビックデータ→データサイエンティストの流れを単なる分析屋で終わらせないと言うメッセージを強く感じました。




2013年9月9日月曜日

【書評044】「サムスンの決定はなぜ世界一早いのか」吉田良三

「サムスンの決定はなぜ世界一早いのか」吉田良三
URL:http://goo.gl/DQMs1s


概要:

サムスンの成り立ちと、その成長スピードの仕組みに迫る


感想:

サムスン、昔は日本企業を真似た三流メーカのイメージが強かったですが、いまやスマートフォンならば世界シェアNO1の企業に。韓国ではLGが勢いを無くしていく中唯一世界で闘える企業だと言えます。

その特徴は意思決定のスピード。仕組みは単純でトップダウンでは無い。そして明確な指示を行わないと言うことです。

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サムスンでは2000年以降、トップダウンはやめてボトムアップにしたのです。サムスングループのリーダーである李健照会長は、将来的な方向性だけを示して、そのためにどうするべきかということは全てしたの人間達に任せるようにしています。

李健照会長は、百年先までの方向性を示しています。しかしその一方、三年後の売上をどうするかと言ったことは口にしていません。そうした短期スパンのことや細かいレベルの話しは完全に部下達に委ねているからです。
(P37)
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この逆上位下達方式により、経営者に判断をさせる時間を短縮しています。現場のことは現場が一番よく理解しており、その理解に至るまでの資料や説明を経営陣にすることに要する時間を無駄と考えています。この考え方、なかなか日本だと採用しないんだろうなと思いました。

日本の大手企業における役職は、あくまでも勤めた期間に対する褒美であり、我慢の代償だという考え方はいまでもあります。何年勤めたから部長で、何年勤めたから役員。これが当たり前と考えてる会社が多い。その人の今までの実績に対する報酬であり、これからの期待に対する報酬ではない。よって、日本企業における役員は常にお飾りでしか無いです。そういう意味でサムスンのこの考え方はいいなと感じました。もう一つ。

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組織のトップが細かいことまですべての指示をしていれば、下の人間はただそれを実行するだけになってしまいます。指示待ち人間はダメだという言い方をされますが、そういう人たちだけを責めることはできません。そんな言い方をしている人たちが、細かい指示を出しすぎていることに問題があるのです。

下の人間が「自分で考える」ことが習慣化されて初めて、その能力を伸ばしていくことができるのです。そういう環境をつくり、キキに強い組織にしていくこともリーダーの役割といえるでしょう
(P124)
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確かに。
戦略は抽象的に、戦術は具体的に。戦略はリーダーに、戦術は現場に。こういうことでしょうか。指示を出すのではなくて考えさせる。どうしても口を出したくなりがちですが。。本書を参考にしたいと思います。