2013年10月16日水曜日

【書評049】「新しい市場のつくりかた」三宅秀道

「新しい市場のつくりかた」三宅秀道
URL:http://goo.gl/nTxBZv

概要:

東京大学大学院ものづくり経営研究センターを経て、現東海大学講師をつとめる著者が多くの事例を紹介しながら、新しい市場とはどのように形成していくのかを説明する


感想:

いろんな事例が載っている本書は読んでてとても勉強になりました。ただ、メーカー観点が強いエピソードが多かったです。その中で普遍的なテーマである組織についての事例が面白いです。

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第2次世界大戦の記録を読むと、日本軍が陥った欠陥の一つに、失敗をした将官を罰することができないということがあります。失敗をした将官を罰すると、将官同士の和が乱れ、彼らのつくったコミュニティがバラバラになってしまうからです。それと似た話しは、現代でも企業を取材していて頻繁に耳にします。

経営学は、近代量産工業が登場してから、大規模なビジネス組織が人類の社会で活躍するようになり、その大規模な組織がどのように機能しているのかを研究しようとして体系化された知識です。しかしこの問題は、おそらくは近代よりはるか以前から私たちが直面しているビジネス組織以前の人間集団の問題です。
(P126)
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明確にある、人間集団の問題。「他の部署の問題ですから」「それはそうなんですけどなかなかウチだと難しいんですよ」著者はこういう言い方をする組織に発展は無いと断言します。組織の発展は経済学ではなく、それ以前の人間集団心理が大きく影響しています。「あの人は役職者だから偉い」と言う観点でいる限りその組織、企業の発展は無いと記します。

そして、新しい市場を作る人、生み出す人を下記の通り記します。

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自分と違う考えの人、自分と立場が違う人、自分と違う欲求を持っている人、自分と違う技術や経営資源を持っている人と、他者と他者として真っ向から交流し情報を取ってきてこそ未整理の混沌の中から良い偶然を必然として発生させることができる。それを社内にもって帰ってきて、取り込んで、新しい市場想像につなげる、そういう生き方が確かにあるのです。

それと共通する土壌にあるのが、今日本中で流行している病だと思いますが、「何でも検索してわかったつもりになる」症候群です。意味を説明するまでもないでしょうが、あくまで予習の段階で補助的にしか使うべきでないインターネット上の情報にアクセスして、検索エンジンに水先案内を委ねているだけの人がなんと多いことでしょう。

あらかじめ知りたいと思っていた情報に目を通すだけで日が暮れる」状態で、しかし、その「あらかじめ」の外へでない限りは、自分で手間をかけ、他者と交わってこそ手に入る種類の情報は手に入りません。
(P350)
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この「あらかじめ」想定していた内容の外側、「未知への畏れ」を失った組織は新しい価値を創造することができない、とまとめます。

これは著者の強烈な皮肉で、僕たちはインターネットで知らないことは無くなった(前提として検索して調べると言う行為がある)が、そのあらかじめ知らないと思ってる範疇に留まることになり、新しい市場や価値を見出すことが出来なくなってきている。これ、確かにそうだなと思いました。

「あらかじめ」の外側への柔軟な対応。心がけたいです。





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