2013年9月2日月曜日

【書評043】「あんぽん 孫正義伝」佐野眞一

「あんぽん 孫正義伝」佐野眞一
URL:http://goo.gl/Yh5hqb


概要:

孫正義がどういう背景と出自から形成されたのか、徹底的に経歴を追った本


感想:

この本、ずっと気になってたんだけど読むのが後回しになってました。と言うのも孫正義の経歴ってけっこういろんなところで読めるので、それを小説仕立てにしてるだけだと勘違いしてたから。読んでみると、孫正義が会社を立ち上げて以降のことは、ほぼ書いてない。徹底的にどこから来て、育てた人達の経歴を追った本でした。かなり低俗な本ではあるんだけど、読み始めると面白くて一気に読みました。

帰化前の名前は安本正義、あだ名は「あんぽん」。まずは在日であること、そして両親の商売、性格を細かく書いたあと、下記のようにまとめる。


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祖母は残飯を集め豚を飼って一家を支え、父は密造酒とパチンコとサラ金で稼いだ金をたっぷり息子に注いで立派な教育をつけさせた。孫一家にとって、在日三世の正義は何よりの誇りだった。
(P229)
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そしてもう一つ、起業したばかりの時に肝臓を悪くし入院している。余命5年と医者に言われ、辛かった時の気持ちと考え方を下記の通り語る。


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だから、最初に入院したとき、泣きましたよ。ぼろぼろにね。まだ会社始めたばかりで子どもも生まれたばかりだというのに、長期に入院しなければならなくなった。自分にはあふれるばかりの情熱とエネルギーがある。事業をこのまま続けていきさえすれば、いつかそれなりの大きな成功ができるという気持ちもある。それなのに、医者は遠回しに、あと五年ぐらいの命だという。それはもう、とんでもなく落ち込みましたよ。

でも、そのとき一番落ち込んだどん底で、アメリカに行く前に読んだ「竜馬がゆく」をもう一回読んだんですよ。そこで、龍馬だって三十三で死んだ、だけど最後の五年ぐらいで人生で最も大きな仕事をした、っていうことに、はたと気がついたんです。

だから、余命五年と言うのは確かに短いけれど、もしかしたら、その五年でそれなりのことがやれるかもしれない、それに、その五年の間に、肝炎を直す方法も見つかるかもしれない、と思い直したんです。それから気持ちがぱっと切り替わって、前向きに生きようと思えるようになったんです。
(P171)
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この本は、この二点に集約される。一つは在日としての差別や貧困から導き出される成功したいという強い想い。もう一つは死に直面したことによる、行動しないことのリスク。この二つから孫正義と言う人は、攻め続けてるんだなと改めて思いました。

翻訳機でシャープから資金を調達し、日本ソフトバンクからソフトバンクへ。ヤフーへの出資、ボーダフォン買収、プロ野球運営、iPhone発売、東日本大震災での個人資産100億円寄付、そしてスプリント買収へ。僕らが知ってる孫正義って、ずっと攻め続けている人だと思います。そしてその理由がこの本には語られていました。

特に出自のところに文字数を割いていて、ここまで書いていいの?と思ったりもしましたが、単なる成功談よりかはずっと面白かったです。佐野眞一っていろいろ問題ある作家だけど本書は読んでよかったと思いました。





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